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Ryota Magic!

僕の音楽への情熱は10代で終った。と、思い続けていた。Ryotaの魔法にかかるまでは...。

 林 裕之(作詞家)..... 


 僕は18の頃からプロとして音楽業界に身を置いていた。駈け出しの作詞家だったけど、生活そのものが音楽に溢れていた。なにせ血気に溢れ、感性だけで生きていた10代だ。とにかくその頃は自分がつくる歌は勿論、僕に刺激となる音楽全てに感動し、酔いしれていた。

 それから25年、気が付いたら僕は回りからベテランなどと呼ばれるようになってしまった。今までどれだけの曲がつくられ、そして消えていったことか。僕にとって音楽とは..そう、仕事なんだよ。今ここにいるのは、メシの種になりそうな音楽にしか興味を示さない僕なのだ。

 歌に感動する? そんな甘いこと言ってられないよ。でも確か昔はあったんだ。娘が産まれた時に聞いたS.ワンダーの「Isn't She lovely」。ちょっと涙した記憶がある。でもそれは18年も前のこと。僕が愛してやまない音楽への憧憬は、もうしぼんでしまったのかも知れない..。

 ある日、昔の音楽仲間で、今はLAで音楽プロデューサーをしている友人と久しぶりに会った。その時、「これ、今度俺がデビューさせる新人なんだ」と、デモテープを1つ渡してくれた。でも正直に言うと、その時僕の心の中には期待なんてなかった。プレーヤーのスイッチを入れるまでは...。

 アルバムのタイトルは『素敵な日々』。「ふーん、ちょっと懐かしいなぁ」と思った瞬間、鳥肌が立つくらいの感動が僕の心を貫いた。「えぇっ!?」こんなことは思いもしなかった。もう何年も前に過ぎ去った、音楽と一つになって生きていた頃の自分が突然甦ってきたんだ!

 不覚にも僕はRyotaの魔法にかかってしまった。僕が誰か特別な人を待っているなんて自覚は全然なかったけど、Ryotaを聞いたとたん、僕はRyotaを待っていたんだということに気がついた。それからというもの、僕は友人から貰ったデモテープを、繰り返し繰り返し聞いていた。

 そんな僕の心の変化を察した のか、妻が世界最小のMDプレーヤーというやつを、誕生日にプレゼントしてくれた。実はその時、妻が本当に愛おしく思えた。恥ずかしいけど、こんな気持ちになったのは新婚の時以来。多分これもRyotaの魔法に違いない。

 ある日、1日の仕事を終え、妻からもらったとっておきのMDでRyotaを聞きながら街を歩いていた。すると、いつもと街の景色が違って見えた。「そうか、みんなは未だRyotaの魔法を知らないんだ!」寂しいけど、でもちょっと優越感が混じったような、そんな複雑な思いがした。

 僕はおそらく日本で1番早く、魔法にかかることができた幸せ者だ。でも、もうすぐみんながRyotaの魔法で、それぞれの『素敵な日々』を甦らせることができる。CDの発売が楽しみだ。そうなったら僕は、酔う度に「僕が最初に魔法にかかったんだよ」と、どうでもいいことを、自慢するに違いない。僕はその日が本当に待ちどうしい。



     

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上記記事はLAvoice の許諾を得て抜粋、掲載させて頂きました。Lavoice.net