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  田中啓介/映像作家 

 過ぎ去り日のノスタルジー。商業用コピーだとしたら常套過ぎる。でも、これが本当のRyotaなのだ。このアルバムの中のバラードもR&Bも、彼の唄にはどこか親愛の響きがあり、自分に正直に生きている無意識の"魂"のようなものが聞こえてくる。

 『素敵な日々』
 本物のアートとは作為を超えたところにしか存在しない。その意味で彼は紛れもないアーティストだ。

 長尾良太。1971年徳島県に生まれ、サッカー選手を目指していた少年時代。高校サッカーインターハイ出場、試合中に靭帯を切断、サッカーを断念する。高校卒業後、大阪に渡り音楽を勉強しながらライブハウス活動。そんな生活の中、アメリカ永住権の抽選にたまたま当選したことがきっかけで新天地を求め渡米。L.Aを拠点にシンガーとして歩き始める。しかし、そう簡単に音楽で食えるはずもなく、様々なバイトをしながら唄い続ける毎日。やがて、L.A在住の音楽プロデューサーのヨシオ・J・マキと出会い今回の日本デビューへと繋がった。渡米してから5年半が経過していた。

   Ryotaには、「俺はアーティストだ!」というような気負いが全くない。ある日、彼のインタビューを依頼され、Ryotaを被写体として見た時に気が付いたのだが、彼が唄っているときの口元が実にセクシーだった。ギターを抱えたRyotaの姿をビデオカメラで俯瞰気味に捉えた時、「そうか、彼は天性の歌手なのだ。」と思いながら私はカメラを回していた。そう感じたのは私だけではなかった。 最近ファイナルファンタジーに没頭中の今年13才になる息子が、いつも音が途切れることのない我家で、「これ、いいネ!」と言って、手を止めたのが、Ryotaの曲だった。何の先入観も持たない少年の耳に残ったのがRyotaであったことが、何故か私にはとても嬉しかった。

 「何故描かない?」

 絵になる風景を探すな、よく見ればどんな自然も美しい。その自然の中で私は意識をしなくなる。すると、自然は夢のように絵になっていく」これはクロサワの「夢」という映画の中でゴッホが語った言葉である。アートがアートであるための最低条件がこの言葉に凝縮されている。 

 もし、何の情報もないまま、初めてゴッホの絵を観た時に、あなたの心はどう動くだろう?

 ゴッホだから感動したのか? 感動したらゴッホだったのか? みんなもっと自分の感覚に素直であって欲しい。Ryotaの唄に心を動かされている自分をあるがままに受け入れて欲しい。

 Ryotaを癒し系と言ったら語弊があるだろう。しかし、極めて自然な日常を、言葉よりも微妙に唄に表わしたこのアルバムに、僕等を"安らぎ"で包んでくれる不思議な"RYOTA MAGIC"が秘められていることは、紛れもない事実なのだ。  
      
      
 
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