3年目の私

3年目の私  福井義直

入社して3年目頃には、ミノルタFLEXと言う二眼レフのレンズ焦点の調整をやっていた。被写体の光がレンズを通して、フィルム面に焦点を結ぶ。コリメーターと言う精密機械を使って無限大に置かれたテストチャートをフィルム面にすりガラスを当て、像をルーペで見ながら焦点を合わせる。

人間の目と言うのは、果たしてどのぐらいの誤差まで見分けることができるのか。1/100 ミリいや1/1000ミリ?そうです。1/1000ミリの焦点の誤差を十分見分けることのできる精度を神様から授かっている。その誤差をはっきりと見分け、レンズ部をボディ本体に固定する。また、片ボケと言って、6X6のフィルムの上下、左右のボケも調整して行く。

その頃、レンズのガラス素材の良しあしのあるのを知った。ミノルタは、日本工学と並んで、日本で唯一のカメラメーカーで、レンズ溶解から、最終カメラの組み立てまで、一環作業をしているメーカーであった。大阪伊丹空港の伊丹市に溶解工場があって、直系1メートルほどもある陶器の中で溶解する。

陶器だと、溶解中、土の成分がガラスに影響するので、ある種のレンズの溶解は、直径30センチメートルほどのプラチナのポットを使用していた。溶解されたガラスを冷却し、レンズ1枚分の大きさに割り、それを暖めて、鉄製の型に入れ、プレスして行く。その後、アニーリングを経て、研磨に入っていく。仕上がった後、真空の中で、コーティングをしていくのだが、当時はアンバーコーティングか、マゼンタコーティングが主流であった。

レンズの歪み補正のため、通常、何枚かのレンズを組みあせて行く。その後、レンズにシリアルナンバーの彫刻がなされ完成となる。ところが、そのシリアルナンバーの最初の二桁が、その同じ陶器で溶解されたナンバーとなる。

1/1000ミリの誤差を見分けるには、その陶器で溶解されたレンズの良さまでも見抜いてしまう。ミノルタFLEXで、レンズナンバー14XXXXは、最高のレンズとされていた。ところで、ミノルタは、ロッコールレンズに、レンズ何枚、何群で作られているということが、彫刻されている。例えばロッコール(ROKKOR PF)Pは、ペンタゴン(五角形)から来るもので、五群、Fは、アルファペットのAから勘定して6番目、従ってこのレンズは、6枚五群からなっているレンズと判る。



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